21世紀に入って最初の四半世紀が過ぎようとしています。当法人は、大学関係者やコンサルタンツ・シンクタンクのメンバーがその設立にかかわったこともあって、学術や調査の行為と市民や事業者、行政の営みとの間に良き関係をつくることをベースにとりくみを行ってきた歩みがあります。環境を主題として地域に根差した活動を展開することを目的に設立した団体ですが、時代の変化と共に取りあげる主題も変わりつつあります。
ここ3期6年の間は、持続可能な都市のありかたと各主体の連携のもとに調査し構想し他の団体との連携でその取り組みを促すこと、市民団体や各種団体の取り組む地域環境づくりにかかわってその支援をおこなうこと、大学の地域連携や学術振興にあたって他の団体との連携を図ることに注力してきました。すなわち、当法人が特定の具体的な環境目標に絞ることがないのは、その成立の背景によります。
それぞれについて、当法人として目立った成果をあげることができておりませんが、連携した相手がそれなりの成果をあげていることで縁の下の役割を果たすことができれば、意味があると考えて来ました。例えば、新型コロナ感染がまだ流行していた時期に、暑熱対策としてのスマートアンブレラの実証を大阪府下で行う事業にもお手伝いができたことは喜びでもあります。大阪・関西万博の円形リングのような巨大な構造物とは比較になりませんが、独創的な「スマートアンブレラ」の実証に関わることができました。木造の傘状の屋根を都市のオープンスペースに設置してみればどのような効果があり、また技術的・社会的・心理的な課題があるかが実感できました。
都市圏の郊外住宅地や変容著しい海岸沿いに残る前世紀の人の営みを伝え、遺し、活用していきつつ、現世世代のくらしを安全で豊かにする試みを間接的に支援することにも、地域には多様な思いと行動があるだけに紆余曲折があります。当法人の成果と胸を張れるものはまだありません。各地に重伝建や登録有形文化財建造物があれども、まちなみや風土と一体的に保全活用(修復維持)されている例は多くありません.自然環境の側から生垣や屋敷林、庭園などを併せて活用維持し、これに橋梁や街路、川の護岸等に手を加えた造作にも環境文化的な価値を見出していきたいと考えています。風土、土木、風景、等の有機的で「こころ」と相関する領域で現代の環境を診て、智恵で解釈していくことは、現代的な気候中立や脱炭素、生物多様性の理念とも調和、両立しうる道と信じています。
防災からのまちづくりは多く例があり、避難の実際や防災インフラの提案などは他に学ぶことが多くあります。当法人ができるのは、そのメンバーが何らかの縁があることに焦点を当てることが望ましいという立場です。現在のところ、大阪市西淀川区の佃島にこだわりをもっていますが、地元の住民や各団体との話し合いを続けている状態を超えるに至っていません。ここでも和歌集や摂津名所図会等に見られる人々の営みを視野に入れたいと思います。
次世代の取り組みに継承し得るように、任期を全うしたいとの想いを表して、皆さんのご協力を切に願います。
令和6年 冬
代表理事(理事長) 盛岡 通